ベーコンを作りながら
朝の4時半、月が見えて目が覚めた。枕を東にして寝ている。窓にはカーテンをしていないから、時々月明かりに起こされる。 調べたら、今日は月齢24.5。年が明けた3日が朔月(新月)で、18日が望月(満月)だ。大寒が20日だから、寒い夜に月明かりの「キーン」という音が聴こえるだろう。立木が寒さで割れる音も響くかもしれない。 今日は、ベーコンに煙をかける。丑年最後の豚?のベーコン、仕上げだ。煙をかける前に外気で乾かすのだけれど、月=晴天=冷え込む=凍る=美味しく仕上がらない。陽が昇り、氷点下でなくなるのを待とう。出来上がりまで2週間以上、出来上がってから2週間くらい寝かせるとさらに美味しくなる。超スローフードだ。 燻煙材は、ヒッコリーだ。山桜のチップが有名だけれど、ヒッコリーの香りが好きでベーコンにはずっと使っている。 燻製器は、もう25年も前になるだろうか、友人から贈られたものを大切に使い続けている。だから今まで作った燻製の香りが染みついている。 割とせっかちな性格の自分の趣味が、超スローフードのベーコン作りなのは不思議ではない。 仕込んでから食べるまでには、それこそ前の満月から次の満月になるくらいの時間がかかるのだけれど、一つ一つの工程では、せっかちが役に立つ。 塩漬けはうまくいったか、塩抜きはいい塩梅(豚)か、風は吹いてちゃんと肉を乾かしているか、熱源の温度は低くないか、高すぎないか、煙は多すぎないか、お腹を空かせた愛犬が燻製器に体当たりをしてこないように餌をいっぱい食べさせる等々、気の休まる暇がない。 薪を運んだり、割ったり、掃除をするふりをしたり、コーヒーを飲んだり、ブログを書いたり、煙をかけながらその合間にいろいろな仕事をして、ベーコンを完成させていく。 さて、作ったベーコンは1個ぐらいは自分の口に入るが、ほとんどは友人にあげる。それも楽しい。情けとベーコンは人の為ならず。お返しに、自分のベーコン以上に素敵なものを頂いている。 こうやって時間は流れていく。楽しい時間だ。でも、ベーコンを作るのは、目的ではない。 ベーコンを作りながら、何かを待っている。だから何年も作り続けている。 陽が昇り、森が光りだした。