夏の飲み物

   昨日は暑いヒロシマの日だった。夜半から降り出した雨は夜明けまで続き、森の熱をすっかり洗い流してくれた。曇っているが爽やかな風が吹き、葉擦れの音で目を覚ました。

 ここ5年くらいで夏の森も30℃を超す日が増えた。その前はお盆の頃の1週間だけ暑く、普段の朝晩は20℃くらいだった。そこでとうとう4年前にエアコンを1台付けた。次の年に200Vのものを1台追加、また次の年にも1台と増え、ブレーカーが落ちないように60A(アンペア)にした。エアコンのスイッチを入れるたびに後ろめたさを感じる。でも、高齢の母のためになるべく一定の室温を保つようにしている。近くの友人が電気屋で頼りになる。

 夏は汗をかきたい。そして、塩鮭と白い飯を頬張りたいと前に書いた。もちろん、味噌汁も熱いに限る。新ジャガ、新カボチャ、茄子、茗荷、変わったところでは収穫できずにでっかくなってしまった胡瓜。白菜の味噌汁を飲んだら、不思議と冬の感覚が巡った。

 夏の飲み物で好きなのは、ここの水だ。遠くの山に積もった雪、降った雨が何年かして集まり、沢の底の下を流れる伏流水となり、それを汲み上げた冷たい軟水だ。

 冷たい緑茶は夏の飲み物の定番となったが、緑茶や焙じ茶は冷たいものより程よく熱い方が好きだ。冷たいお茶を飲むとしたらいつも麦茶。子どもの頃の味覚のままだ。

 南の国では、街の屋台で売っている椰子の実ジュースをよく飲んでいた。注文すると大きな鉈(なた)を器用に扱って実の上部を平らに切り落とし、穴を開け、ストローを差して供してくれる。その間、1分とかからないファストドリンクだ。冷蔵庫になんか入っていないのに、意外と冷たくてうれしい。飲み終わると容器?の実を引き取ってくれる。やがて土になるんだ。ホームセンターで売っている土にも含まれている。最近、某業務スーパーで「ココナッツジュース」を発見して小躍りした。けっこうあの頃の味で一層うれしかった。

 夏のトルコでは、なかなかバスが来なくて暑さで干からびそうになったことがあった。日本と違ってトルコの夏は乾燥しているのだ。そんな時、近くの売店で買った1本の「アイラン」に救われた。飲むヨーグルトなのだが塩味だ。飲んだ瞬間、水不足で萎れている朝顔の気持ちが分かった。ここらでは売ってないので、夏になるとプレーンヨーグルトを水で薄め、塩を入れて飲んでいる。

 椰子の実ジュース、アイラン、そして16年前のヒロシマの日の朝にトルコで飲んだ熱くて苦いチャイも、今も体の中を流れているのは確かだ。

「名も知らぬ遠き島より 

 流れ寄る椰子の實一つ

 故郷の岸を離れて

 汝(なれ)はそも波に幾月」 島崎藤村「椰子の實」



半月前の山百合。今はもう花を落とした。








 コバギボウシ、きれいだ。                                                                                     

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