めっけ

 朝方、雨が上がったので森に入った。春の山菜「シドキ」を採るためだ。「シドケ」とも呼ばれる。ここいらでは「人口に膾炙(かいしゃ)している」山菜ではなく、馴染みが薄いのか人の口にはあまり入らない。膾(なます)でも炙った肉でもなく、山菜だし。こんな下手な例文でいいのかなんて考えながら、一歩、また一歩、奥に奥に進んで行く。

 後ろを振り返ると、半年前に新しく家族になった2匹の保護犬のどちらも付いてこない。まだまだ主人として認められていないのだ。途端に心細くなり、スマホで音楽を流し、大きな声で歌った。誰よりも森の熊さんに聴いて欲しくて。

 1曲目はORANGE RANGE(オレンジレンジ)の「花」。山桜の花びらはもう散ってしまったけれど、夢みたいにシドキに出逢いたいのだ。

 2曲目はラッキーオールドサンの「ミッドナイトバス」が流れてきた。なかなかいい選曲だ。「明日のことは明日決める」の歌詞が好きだ。本当は次の日までにやらなければならない仕事が「山積み」なのに、「山歩き」している。「思い出す あの約束の場所まで 連れて行って」そうそう去年シドキを見つけた約束の場所まで。だれと約束したんだっけ。

 3曲目は「Moon River」だ。オードリー・ヘップバーンが歌っているやつ。大好きな歌で、ヘップバーンが映画の中で爪弾いているのと同じようなギターまで買い込んでしまった。

「There's such a lot of world to see」と歌っていた、まさにその時。

「めっけ(見つけた)。」シドキからすれば「めっかっちった。」

 すぐ隣の楓の葉によく似た形の葉。「モミジガサ」とも呼ばれる。楓は葉の切れ込みが五つだが、シドキは七つ。葉っぱが周りの木々や草の新緑よりは濃い緑色で、艶々と光っている。

 シドキは去年の春より増えて、約束通り待っていてくれた。(と都合よく解釈)

 下の方の葉っぱは残しながら、柔らかい茎を手折る。こいつをさっと湯がいて、少しの味噌と和えて2,3日漬けておくと、春の終わりと夏の始まりのリレーのような味がする。

シドキ・・味噌漬け、お浸し。

五加木・・ウコギご飯。ばあちゃんがよく作ってくれた思い出の味だ。

行者にんにく・・醤油漬けにして、冷や奴にかける。けっこう保存できる。

ウルイ・・オランデーズソースで。酢味噌だと思って食べるとうれしい勘違いだ。

     タコと一緒に山葵醤油和えにしても春の風が駆け抜ける味。 

山葵・・さっと湯がいて醤油漬けにして密封する。冷めると辛みがツーン。

クレソン(和蘭水芥子)・・バターソテーやステーキの付け合わせ。お浸しもいい。

漉し油・・一番は天ぷら。コシアブラご飯もどうぞ。

タラの芽・・天ぷら。天ぷらうどん。タラの芽ご飯。

山椒の芽・・鰊の山椒漬け、緑の山椒味噌は和風のジェノバソースみたいだ。

菜花・・芥子醤油和え、刻み海苔和え。

筍・・七分づき筍ご飯、鰊と蕗との炊き合わせ、焼き筍。タイカレーでも「アロイ!」

蕗・・グリーンタイカレー!あまりに合うのでびっくりした。

 全部おいしく頂いた。また来年の春に会う約束を勝手にした。

 もうすぐ夏だ。

 








シドキ








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