夏は来ぬ

”人生が少しだけ うるさくなってきたけど

逃げ場所のない覚悟が 夢にかわった”

(「シャボン玉」 長渕剛)

「変わった」「替わった」「代わった」「換わった」今日の気分はどれかな。

しかし、こう続くとそろそろ覚悟をしないといけない。

何が続くのかと言うと、、、まずは夏の森の一日から。

夏至は過ぎたけれど、6月初めから8月お盆まではふと懐かしさがこみ上げてくる季節だ。かぶと虫、からす瓜をくり抜いて作ったランタン、日暮らしの切ない鳴き声が聞こえると一気に涼しくなったものだ。

朝は野鳥の鳴き声で目を覚ます。朝4時頃だ。そこから一気に大気は明るくなる。ここらの気温は20℃を下回る。油断して寝ると、朝に鼻水を啜る。啜るなら鼻水よりコーヒーがいい。20年以上、「ゆら」のコーヒー豆と一緒の朝の時間だ。いつもと同じ1.5杯分の時間、遠く縄文時代の先輩の生活を想像してみる。外で飲む、夏も冬も。

「桑の実は絶品スイーツだ。」とか、「岩魚はまだ脂はのってはいないだろう。」とか、

「日本ざりがには丸々太って旬だぞ。」とか。前の年に蓄えた団栗は、芽を出してしまってまずい。炭水化物がないぞと、話していたかな。

その頃、猿も鹿も熊も先輩の住む森には訪ねてこなかっただろう。行けば食料として歓迎されるからだ。

二千年以上の歳月を経て、彼らはこの森を怖がらなくなった。彼らが食料になることは滅多になくなった。特に原発事故以降は。彼らの舌は人間並みに肥えた。丸々と太ったアンデスからやってきたでんぷん率の豊かなじゃがいも。果物のように甘い「悪魔の実」のトマト、脂肪たっぷりのとうもろこし。ここは彼らにとって美食の森だ。いちじくなんて気絶するくらいおいしいだろう。

毎日、彼らは訪ねてくる。日本語は通じない。去年はじゃがいもとトマト、かぼちゃは彼らのごちそうになり、人間の口に入らなかった。

そこで今年は、保護犬だった愛犬に不寝番を託した。ところが、彼女の鳴き声はあまりにも美しく響き、しかも一晩中がんばるので、結局自分が不寝番の片棒をかつがされる羽目になった。朝になり、のんびり寝ている愛犬を見て一晩中頑張れる理由を悟り、同時に人間の浅知恵に気づいた。「さる」の語源は、知恵が「勝る」が語源という説がある。

逃げ場所もないけれど、覚悟もない。でも、心の半分にはうれしさがある。猿はこの森が好きなのだ。

それでもちょっといたずらしたい。じゃがいもに青唐辛子を刻んで入れてみようか。

栗を爆(は)ぜたり、蟹の子を訓練させたり、いちじくの木の上に臼を忍ばせたり。

猿知恵!いや、人知恵、、、

そうこうしているうちに、梅雨が明けていた。夏は来ぬ。


暑中見舞い。

猪苗代湖と磐梯山と、左の奥に雪を抱いた飯豊連峰が見える。頂上の雪渓を削り、シェラカップで初めてウイスキーのオンザロックを飲んだ17の夏の夜。苦かった。下山して飯豊鉱泉で飲んだコーラの方が何倍もうまかった。



コメント

このブログの人気の投稿

風の正体

枯葉よ~♩落ち葉よ~♩

夏の飲み物