何を食べたいとも、何を欲しいとも思わずに

  おだかな空模様の年明けだ。風が吹き荒れることもなく、雪が降り続くこともない。陽春とまではいかないが、目に優しい光だ。

 わが家の雑煮は、焼いた塩鮭と大根と芹の根を煮て、しょっつるで味を整える。仕上げに芹の茎と葉を散らし、イクラと柚子を彩りにする。もう何回目になるだろう、今年の元日の朝もこの雑煮とおせちを食べながら新玉の年の幸せを願った。

 雑煮の汁を啜りながら、去年の元日は除雪で始まり、一冬繰り返していたことを思い出した。

「新しき年の初めはいや年に雪踏み平(なら)し常かくにもが」(大伴家持)

「降る雪を腰になづみて参り来(こ)し験(しるし)もあるか年の初めに」(同)

のような大雪(4尺くらい)が降ると、それに屈しない姿が勇ましくてかっこいいのだが、ちょっと困る。いや、かなり困る。マイバックホーの登場になるのだが、前に降った雪が暖かくなって水になり、凍て返りで今度は氷になり、またその上に雪が積もると、バックホーでさえスリップし、やりたくもない橇(そり)遊びになってしまう。本当におだやかな空模様の正月でのんびりできた。

 正月に思うことはもう何年も同じこと。ある言葉を知ってからだ。それは、アイヌの昔話である「ウウェペケレ」によく出てくる「ネプ アエルスイ ネプ アコンルスイ カ ソモキノ」”何を食べたいとも、何を欲しいとも思わずに”(千葉大学 中川裕先生訳)という言葉。決して食欲や物欲を否定するのではなく、今持っているものに満足して過ごすことの幸せを諭す話に出てくる言葉だ。

 これがなかなか。永遠のテーマだ。「そんなふうに生きていきたいとも思わずに、自然に」というのもいいな。

 この冬は薪も十分にある。立木が割れるくらい寒い夜が来ても大丈夫だ。




 


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