ブルーベリーの教え

  朝4時を過ぎると森は少しずつ明るくなり、蝉が鳴き始めて目が覚める。家の中はまだ薄暗い。でも、灯りを点けると朝が終わってしまう気がして、そのままでお湯を沸かしコーヒーを淹れる。コーヒーができる頃には、森はさっきより明るくなっている。気温は20℃。

 この夏は森でも30℃をあっさりと超える日がある。この森に住み始めた頃は梅雨明けは7月の中頃が普通で、8月初めからお盆まではけっこう暑かったのだが30℃を超えることはなく、朝晩は涼しくて、Tシャツだけでは寒いので麻や綿の長袖シャツを羽織っていた。寝相がわるいと寒くて目を覚ました。夏は扇風機だけで十分だった。

 ブルーベリーが熟すのはお盆頃だったが、この夏は2週間くらい早い。庭に植えてから27年物、ブルーベリーを摘むのは朝、暑い日中は実が傷つきやすいからだ。黒く完熟した実を一粒一粒探す間、いろいろなことをブルーベリーが教えてくれる。

その1 いろいろな角度から見てください。

 その位置から目に見える実は一部で、たくさんの実が葉の下に隠れている。横から見たり、下から眺めたりすると、上から目線だけでは見つけてもらえない実が多い。

その2 逆光では眩惑する。

 太陽は東から昇る。その光を真っ正面に受けて摘むと、眩しくてどの実が熟しているかよく分からない。年を取り立派な大人になると、特に黒と紺の見分けがつかなくなりタグの表記に頼る。朝の光を背に受けながら、日陰を作り、柔らかな明るさの中だと黒い実を見つけることができる。春の山菜採りも同じで、東に背を向けて西に進む。(朝のテレビ番組で、「台風はこの後、西に北上し温帯低気圧に変わります。」と解説していた。)日の当たらない実に目を向け、よさを見極めろ、ということか。華々しくなくていい。北の窓の明るさは落ち着く。家を建てようか、引っ越そうか考えている人は参考に。北枕は健康に良いらしい。自分の仕事机は北向き。※「北へ帰ろう」(徳久広司)聴いて猛暑を乗り切っている。

その3 一つひとつ。

 ブルーベリーの実は集団で成っている。黒い実、赤い実、青い実が混じっていて、まるでクラスのようだ。それぞれ、自分のペースで成長し、出番を待っている。梢を持ち上げ、その朝に完熟した実を摘むのだが、朝が終わる前に収穫を終わらせようと急ぐと、まだ未熟な実が梢から落ちてしまい、完熟しないまま終わる。大事に扱えば完熟したものを。みんなより遅くても出番を待っているんだな。みんなが笑っているとき、悲しい表情をしている実がある。

その4 全部を見る。

 収穫ばかりに気を取られ、周りに気を配らないと思わぬしっぺ返しに合う。蜂の巣だ。

ブルーベリーは葉が広くて混んでいるので、雨除けになるのだろうか、足長蜂が巣を作ることがある。完熟した実ばかり見て、木の全部を観察しないと刺される。油断禁物。昨日と今日は別な日、別なブルーベリーだ。

その5 収穫時期は戦い。感傷に浸っていられない。

 完熟のピーク時季になると、スズメバチとの戦いがまる。熟した実の香りを嗅ぎつけてやってくる。スズメバチが囓ると、そこから腐ってしまう。そこで、罠をしかけておびき寄せる。罠に使う誘引剤は知恵比べ。熟れたブルーベリー、焼酎、酢など、その時に家にある材料を使って配合し、ペットボトルに入れて吊り下げる。1日に20匹も入ることもある。でも、こっちは楽しみ、あっちは生きるため。ごめんなさい。 

その6 ごほうび

 収穫に喜んで忘れてしまうのが、前の年のことだ。こんなに大きな実をつけ、甘くしてくれた、たくさん実をつけてくれた等々のブルーベリー。今年の実は、去年からの努力の結晶だ。だから、お礼肥の鶏糞を与える。頑張った後の声かけはすごい効き目だ。ありがとう。



 

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