朋有自遠方來 

  休日に床屋で散髪してもらっていたら、床屋を訪ねてきた人がいた。床屋に手作りの漬物をお裾分けに来たようだ。私の知人でもあり、私がいるのに気付くや否や「ちょっと待ってて。」と家に走って戻り、沢庵と野沢菜漬けを持ってきてくれた。その野沢菜漬けは甘い味付けで優しかった。信州あたりの味とは違う。山形からここの森に入植した方だから、本来なら「山形青菜(せいさい)」を漬け菜にした「おみ漬け」を作りたかったのだろう。でも昨年の夏から秋は猛暑で、山形青菜は不作だったと農家の朋に聞いていたのを思い出した。野沢菜と山形青菜は朋だから、代用したと言っては長野の方に失礼だけれど。沢庵もここらの色や味とは違って楽しめた。

 その次の週末は、今度は植木屋の先輩から電話があり、「薪になりそうな木を欲しいか。」と聞いてきた。薪割りも夏の猛暑でさぼってしまったから、この冬は大丈夫かなとキリギリス君の心理になっていたので、三文字で即答。早速、2瓲(t トン)のユニック車4台分の薪(たきぎ)が届いて魂消た(たまげた)。手際よく降ろされた薪の山の高さは自分の背丈以上になって驚いた。それ以上に驚かされたのはその樹種の多様性だ。葉っぱが残って付いていたので、それを手がかりに分かっただけでも「ちゃぼひば」「いとひば」「槐(えんじゅ)」「楓(ふう)」「一位(いちい」その他諸々。この冬はもう大丈夫だ。「最強寒波の襲来」に間に合った。ありがとう、植木屋の朋。

 と、安心したのも束の間(握りこぶしの横幅1つ分 約8cm)、次の日の朝、最強寒波に備えていたバックホーのクローラー(キャタピラーは商品名)の、動力が伝わる駆動輪(もう一つはガイドのような「誘導輪」。車のFFとかFRと同じ)からオイル漏れをしているのを発見してしまった。早速、牛飼いの朋に電話して助言を請う。そうしたら、朝早くからやっていたはずの搾乳終了後、駆けつけてくれた。朝飯は食べたかなと心配になる。バックホーの下に潜り、垂れてくる作動油に濡れ、時折焚き火で手を暖めながら黙々と直してくれた。その姿を眺めながら自分の無力さを感じ、朋に迷惑をかけないように修行しないと、と自分を戒めた。その朋と一緒に「ゆら」のコーヒーを飲んだ。朋の「うまい。」の言葉に救われた。「ゆら」のマスターも朋だと自分で勝手に思っている。

 朋の誰とも酒を飲めなかった。「不亦樂」に至るのはいつのことやら。

 「朋」になりたい。



次の日の朝、さらに4℃下がった。

何年ぶりだろう、お湯が出なくなった。



「鈍色(にびいろ)の空」

刃物などが切れない「鈍る(にぶる)」が語源だけれど、風は「刃物のやうな冬が来た」(高村光太郎)

雪は風に飛ばされ、積もらなかったのは救いだ。



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