インプット

  外で飲むビールのグラスに虫が入る季節となりました。

「絶句」 杜甫  
 江碧鳥逾白
 山青花欲然
 今春看又過
 何日是歸年

「江碧にして鳥の色はますます白く 

 山青くして花然えんと欲す

 今春看看(みすみす)また過ぐ

 何(いず)れの日か是帰年ならん」

「中国へ行ってきた」なのか「中国に行ってきた」なのか。ましてや「中国を旅してきた」なんて言えない。ほんのちょっとの場所で空気を吸い、束の間を過ごしただけだ。それだけ中国は広く、大きかった。ゆったりとした時間と急いている時間が、または、古い歴史と新しい未来が混沌としていて、ある時は息をゆっくり吐き、またある瞬間は急かされるままに息を吸うだけだった。

 日本語を学ぶ時間には、必ず中国語や中国の歴史が登場する。案内してくれる、と言うべきか。人それぞれの信条に依るのだろうが、自分は中国が好きだ。嫌いだと煽る人もいるが、嫌いなものを他者にまで嫌いと訴える必要はなく、それは自分の中にあればいい。

 自分にとって中国は憧れの地であり続けている。今回目にした若い人達は年上の人を敬い、寺にもたくさんの若者が参拝していた。日本に住む中国人の友人はみんな優しく、自分よりずっと道徳を重んじている人ばかりだ。今回出会った人もみんな、同じ人間だった。ただ一つ困った、というか面白かったのは、簡体字だ。当たるとうれしいが、元々の字が分からないのが多かった。もっと中国に触れたい。ビザなし渡航の復活を望んでいるし、草の根交流の醸成が進むといい。

 中国の地方都市(と言っても人口は東京都と同じくらい)で茶摘み体験をした。日本では

「八十八夜」の頃だから同じ時季だ。淡い緑色をした「二葉一芯」を摘み取り、そのあとすぐに焙煎してくれる。「蒸す」工程がないなどの違いはあるが、一服は美味しく、ゆったりとした時間が流れた。

 晴天の下の茶摘みは、野鳥のさえずりが唯一聞こえてくる音だった。その鳴き声が「ピーチュー、ピーチュー」と聞こえて、茶摘みに集中できず、収穫量が足りないのと等外品(とうがいひん 中国語)が多かったので、茶園の主人に最低点を付けられてしまった。それは当然。中国語でビールは「啤酒」、その発音は「ピーチュー」。ずっと「ビール、ビール」と囀(さえず)られていた、いや、囁(ささや)かれていたからだ。

 ピーチューだけでなくいろいろなことが自分の中に入ってきた。たまには学ぶのも、いい時間だ。そうでないといつまでも「今春看又過」を繰り返すだけだ。


 



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